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【この記事の監修者】土地家屋調査士:寺岡孝幸の顔写真

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:合筆登記など不動産の表示に関する登記全般。

経歴:開業以来21年間、合筆登記など登記に関する業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

『合筆登記は自分でできる?』
『合筆登記を専門家に頼まずに自分でやってみたい』
『合筆登記を自分でするにはどうすれば良い?手順は?』
と思われている人も多いのではないでしょうか?

そこで、合筆登記は自分(本人)でできるのかどうかと、
合筆登記を自分でする場合の手順について、
合筆登記の申請業務を行っている土地家屋調査士が解説いたします。

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この記事を閲覧すれば、合筆登記は自分でできるのかどうかと、
自分でする場合の具体的な手順の両方が同時にわかります。

合筆登記は自分でできる?

合筆登記は自分でできる登記です。

なぜなら、合筆登記は、土地の測量など特別な技術が不要で、
いつまでにしなければならないという期限もないため、
一般の方でも十分自分でできる登記だからです。

また、一般の方が作成するには非常に難しい地積測量図も、
合筆登記では必要ないからです。

しかし、やみくもに合筆登記を自分で進めてしまうと、
合筆の条件を満たしていなかったり、
書類の不備・不足で手戻りなどの可能性も高くなります。

特に、合筆登記をするには6つの条件があり、
すべての条件をクリアーしていないと、
合筆登記はできません。

また、共有の土地(所有者が自分以外にもいる土地)の場合、
共有者全員が合筆登記の申請人となるため、
自分一人の意思だけではできないことにも注意が必要です。

そのため、合筆登記を自分(本人)でする場合には、
最初から抜かりのないように、
あとで困らない手順で進めることが大切なのです。

合筆登記を自分でする場合の手順

合筆登記を自分でする場合には、
次の1~6の手順で進めると良いです。

  1. 土地の登記情報・公図・地積測量図を用意する。
  2. 合筆の条件を確認して、合筆可能か判断する。
  3. 合筆登記の申請書など必要書類を用意する。
  4. 管轄法務局に登記申請書類を提出する。
  5. 法務局で書類審査が、約1~2週間行われる。
  6. 合筆登記の完了後、登記完了証などを受け取る。

この流れは、合筆登記を進める際の基本的な手順となります。

ただ、最初の段階で確認や判断を間違えてしまうと、
合筆登記の申請書類を法務局に提出してから補正になったり、
申請の取下げや却下などで、あとで困ることもあります。

そこで、合筆登記を自分でする場合の上記1~6の手順を、
1つ1つ具体的にくわしく解説いたします。

手順1: 登記情報・公図・地積測量図を用意する。

合筆登記を進める場合、一番最初にすべきことが、
合筆したいすべての土地の現在の登記情報と公図、
もしあれば土地の地積測量図を用意することです。

土地の登記内容がわかる登記事項証明書や公図が、
すでにお手元にあれば、それらを使用してもかまいません。

ただし、お手元にある資料が何年も前の資料の場合、
その資料の内容と現在の内容が違っていれば、
登記申請書類の補正や取下げなどで、あとで困ることもあります。

そのため、合筆したい全ての土地の現在の登記情報と公図、
もしあれば地積測量図を法務局で取得して、
その内容を元に進めるのが手戻りのない手順なのです。

なお、地積測量図は、作成されている土地と、
作成されていない土地があるため、
もしあれば用意する(又は法務局で取得する)という意味です。

もし、忙しくて法務局に行く時間がない方や、
土地の登記情報や公図、地積測量図の取得でお困りの方は、
土地の登記情報・公図・地積測量図の取得で困っていませんか?
で楽に解決する方法もあります。

手順2:合筆の条件を確認して合筆可能か判断する。

土地を合筆するには、次の6つの条件があり、
土地の現在の登記情報や公図の内容から、
合筆可能かどうかを判断します。

  1. 土地が互いに接続していること。
  2. 地目と地番区域が同じであること。※現地の地目も同じであること。
  3. 表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであること。
  4. 表題部所有者又は所有権の登記名義人の持分が同じであること。
  5. 所有権の登記がない土地同士か、所有権の登記がある土地同士であること。
  6. 所有権の登記以外の権利に関する登記がないこと。
    (※ただし、制限の特例によって合筆できる場合もあります)

上記6つのすべての条件をクリアーしていれば、
合筆することが可能です。

特に、地目については、登記情報の地目が同じだけでなく、
現地の地目(現況地目)も同じでなければならないので、
かならず現地の状況を確認して判断する必要があります。

これら6つの合筆の条件(合筆制限)については、
合筆の条件(合筆制限)は?合筆できない土地」で、
それぞれ具体的にくわしく解説しています。

また、合筆制限の特例については、
合筆の制限の特例とは?」を参照ください。

なお、抵当権がある土地は、原則、合筆できませんが、
特例によって合筆できる場合もあり、
抵当権付きでも合筆可能?抵当権者の承諾は?」で、
くわしく解説しています。

ただ、現時点で条件をクリアーしていなくても、
土地の登記情報などを先に変更することで、
条件をクリアーする方法もあります。

たとえば、登記の地目が違っていても、
先に地目変更の登記を行い、
同じ地目にしてから合筆する方法です。

もし、所有権の登記名義人の住所や氏名が違っていても、
先に、住所変更登記または氏名変更登記を行い、
同じ住所と氏名にしてから合筆する方法もあるのです。

住所変更登記については、
住所変更登記の必要書類を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。

また、共有の土地(所有者が複数いる土地)の場合、
合筆の条件がすべてクリアーしていれば、
共有者全員に合筆の意思確認を行います。

共有者の1人でも合筆することに反対の人がいれば、
合筆登記ができなくなるからです。

手順3:合筆登記の申請書など必要書類を用意する。

合筆登記に必要な書類として、次の書類があります。

  • 登記申請書
  • 登記済権利証または登記識別情報
  • 申請人の印鑑証明書
  • 登録免許税納付用台紙
  • 資格証明書
  • 代理権限証明情報
  • 地役権証明書と地役権図面

ただし、上記すべての書類が、
常に必要というわけではありません。

どんな場合に、何が必要になるかは、
下記の表をご確認下さい。

必要書類所有権登記がある場合所有権登記が無い場合
登記申請書必要必要
登記済権利証又は登記識別情報合筆前の土地の内、
一筆分のみ必要
不要
申請人の印鑑証明書申請人全員分が必要不要
登録免許税納付用台紙必要不要
資格証明情報申請人が法人の場合
にのみ必要
申請人が法人の場合
にのみ必要
代理権限証明情報代理人が申請なら必要代理人が申請なら必要
地役権証明書と地役権図面合筆後の一部に、
地役権がある場合必要
合筆後の一部に、
地役権がある場合必要

まず、登記申請書は、常に必要な書類で、
登記申請書を作成する際には、最新の様式で、
現在の登記情報を確認しながら作成することが重要です。

なぜなら、現在の登記情報と違う内容を記載したり、
登記申請書の様式や書き方を間違えてしまうと、
法務局の書類審査の段階で、補正作業が必要になるからです。

そのため、合筆の登記申請書の様式と書き方については、
合筆の登記申請書の様式(書式)と書き方」を参照下さい。

次に、登記済権利証や登記識別情報は、
所有権の登記がある場合に必要な書類で、
合筆する前の土地一筆分のみで足ります。

登記済権利証や登記識別情報がどういった書類かは、
登記済権利証の見本」や「登記識別情報通知の見本」を、
それぞれご確認ください。

次に、申請人の印鑑証明書については、
個人でも法人でも、
発行日から3ヶ月以内の印鑑証明書が必要です。

ただし、申請人の印鑑証明書については、
所有権の登記がある場合にのみ必要な書類で、
原本還付を請求することはできません。

なお、土地の所有権の登記名義人が法人の場合は、
合筆の登記申請書の添付情報の欄に、
「印鑑証明書(会社法人等番号123456789012)」のように、
会社法人等番号を記載すれば、印鑑証明書の提出は不要です。

合筆の登記申請書の添付情報欄の書き方については、
合筆の登記申請書の様式(書式)と書き方」を参照下さい。

次に、資格証明情報というのは、
申請人が法人の場合にのみ必要な書類で、具体的には、
法人の作成後3ヶ月以内の登記事項証明書のことです。

ただし、登記申請書の添付情報の欄に、
資格証明情報(会社法人等番号012345678912番)のように、
土地の所有者の会社法人等番号を記載すれば、
法人の登記事項証明書の提出は不要になります。

合筆の登記申請書の添付情報欄の書き方については、
合筆の登記申請書の様式(書式)と書き方」を参照下さい。

次に、代理権限証明情報というのは、
具体的には、委任状のことです。

委任状で注意しなければならないことは、
合筆する土地の所有者全員からの委任状を、
登記申請書類と一緒に提出する必要があることです。

土地所有者が1名の場合は、その人の委任状で良いですが、
土地所有者が数名の場合は、
共有者全員からの委任状が必要ということです。

ただ、土地の所有者が数名いる場合、
連名の1枚の委任状でかまいません。

合筆登記の委任状の書式や作成方法については、
合筆登記の委任状を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。

また、合筆した後の土地の一部に、
地役権の登記がある場合は、
地役権証明書と地役権図面も必要になります。

なお、合筆登記に必要な書類については、
合筆登記の必要書類を徹底解説!」で、
1つ1つ具体的にくわしく解説しています。

手順4:管轄法務局に登記申請書類を提出する。

登記申請書類の提出先は、法務局になりますが、
どこの法務局でも良いわけではありません。

たとえば、〇〇市の不動産の登記申請は、
〇〇地方法務局に登記申請書類を提出するといった感じで、
各法務局でそれぞれ管轄区域が決められています。

そのため、その土地を管轄する法務局に対して、
合筆の登記申請書類を提出しなければならないのです。

もし、管轄法務局でない法務局に登記申請書類を提出しても、
取下げになるか、却下されるだけです。

登記申請書類を取下げる場合、
取下げ書など別途必要になり面倒になります。

そのため、管轄法務局がどこの法務局になるのかは、
登記申請書類を提出する前に、
登記申請先がわかる法務局の管轄区域の一覧」でご確認ください。

なお、合筆の登記申請書類を法務局に提出する場合、
次の3つの申請方法があります。

  • 窓口申請(法務局の窓口で申請書類を提出する方法)
  • 郵送申請(法務局に対して郵送で申請書類を提出する方法)
  • オンライン申請(オンライン申請システムで提出する方法)

この3つの申請方法の内、オンライン申請は、
パソコンの設定や、電子証明書の取得が事前に必要なため、
合筆登記を自分(本人)でする場合にはおすすめできません。

また、所有権の登記のある土地の合筆の場合には、
収入印紙で登録免許税を納付するのが一般的です。

※合筆登記の登録免許税については、
合筆登記の登録免許税について」を参照下さい。

そのため、ゆうちょ銀行等で収入印紙を購入するのであれば、
登記申請書類の法務局への提出は、窓口申請でも、
郵送申請でもどちらでも良いでしょう。

しかし、法務局内の売店で収入印紙を購入するのであれば、
登記申請書類を提出する直前に収入印紙を売店で購入して、
登録免許税納付用台紙に収入印紙を貼り付けてから、
法務局の窓口に登記申請書類を提出すると良いです。

なお、収入印紙が買える場所や買い方については、
収入印紙はどこで買える?買い方は?」で、
くわしく解説しています。

また、郵送による登記申請をお考えの場合は、
「登記申請を郵送でできる?郵送でする方法」を参照ください。

手順5:法務局で書類審査が約1~2週間行われる。

法務局で書類審査が行われている間は、
法務局からの電話連絡をいつでも受けれるようにしておきます。

なぜなら、登記申請書類の内容に誤りがあったり、
不備がある場合、登記申請書に記載した申請人の電話番号に、
法務局の担当者から連絡が来るからです。

もし、法務局の担当者から電話連絡が来た場合、
簡単な誤りであれば、担当者の指示に従って訂正作業を行います。

この訂正作業のことを、補正といいます。

補正については、補正する内容と担当者によって、
どうすれば良いのか違いあるので、
電話で補正方法をくわしく確認することが必要です。

もし、補正できないような内容だった場合には、
申請人から登記申請を取下げることもできます。

ただ、登記申請を取下げるには、取下書の提出と、
登録免許税を納めている場合には、
再使用の手続きが必要になります。

登記申請の取下げについては、
「登記申請を取下げるには?」で、
くわしく解説しています。

手順6:合筆登記の完了後、登記完了証等を受取る。

登記完了の予定日までに法務局から電話連絡がなければ、
通常、登記が完了しています。

登記完了予定日以降でしたら、
いつでも法務局へ登記完了書類を受取りに行ってかまいません。

ただ、法務局に行く前に、念のため、
登記が完了しているかどうかを、
電話で確認すると良いです。

もし、郵送で登記完了書類を受け取る場合には、
登記申請書類の提出時に一緒に提出した返信用封筒にて、
登記完了次第、登記完了書類が返送されてきます。

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