最新更新日付 2024年12月1日
土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:合筆登記など不動産の表示に関する登記全般。
経歴:開業以来21年間、合筆登記など登記に関する業務を行っています。
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合筆登記(ごうひつとうき又はがっぴつとうき)とは、
隣接する数筆の土地を合体して、
一筆の土地にする登記のことです。
たとえば、次のような隣接する二筆以上の土地を合体して、
一筆の土地にすることを合筆(ごうひつ又はがっぴつ)といいます。
土地を合筆するには、法務局への申請手続きが必要で、
合筆する土地の表題部所有者 または 所有権の登記名義人が、
その土地を管轄する法務局に合筆の登記申請を行います。
そして、合筆の登記申請の内容に問題がなければ、
法務局の登記官が合筆登記をする流れになっているのです。
ただ、合筆登記をすると、土地の登記簿の内容や、
土地の地番、面積、境界、権利証がすべて変わります。
そこで、合筆登記で何がどう変わるのかがわかるように、
合筆登記の申請業務を行っている土地家屋調査士が、
合筆登記についてわかりやすく解説いたします。
この記事では、合筆登記をすることで、
土地の何がどう変わるのかが具体的にわかります。
合筆登記で土地の登記簿とその内容が変わる。
合筆登記をすると、合筆前の土地の内、
首位の地番の土地の登記簿のみが残されて、
首位の地番以外の土地の登記簿はすべて閉鎖されます。
たとえば、地番が1番~3番の土地を合筆登記した場合、
次のように現地の土地の状況は、
区画全体で一筆(1番)の土地に変わります。
この場合、法務局にある土地の登記簿については、
次のように首位の地番である1番の土地の登記簿のみを残して、
他の土地(2番と3番)の登記簿は閉鎖されるということです。
そして次の例は、合筆後に残る地番の登記簿の表題部の例で、
特に赤枠内を注目して見てください。
赤枠内のように、合筆登記がされると、
合筆前の地積(100.00)を下線で抹消して、
その下に合筆後の地積(300.00)が記録されます。
そして、原因及びその日付欄には、
何番の土地を合筆したのかが記録され、
合筆登記の日付が記録されるのです。
また、合筆後に残る地番の登記簿に、
所有権に関する登記やその他権利に関する登記がある場合、
登記簿の権利部に、合筆登記が行われたことが記録されます。
次の例は、合筆後に残る地番の登記簿の権利部(甲区)の例で、
特に赤枠内を注目して見てください。
このように、登記簿の権利部(甲区)には新しい順位番号で、
「合併による所有権登記」と、受付年月日・受付番号、
所有者の住所氏名が記録されるのです。
そして、登記簿に権利部(乙区)がある場合は、
乙区に記載された権利について、
合筆後の土地全体に及ぶ旨の付記登記が職権で行われます。
次の例は、合筆後に残る地番の登記簿の権利部(乙区)の例で、
特に赤枠内を注目して見てください。
このように、「〇番登記は合併後の土地の全部に関する」旨と、
合筆登記の完了日に付記登記をしたことが記録されるのです。
次に、合筆した後で閉鎖される土地の登記簿の内容は、
どう変わるのかを見ていきます。
次の例は、合筆後に閉鎖された土地の登記簿の表題部の例で、
特に赤枠内を注目して見てください。
このように、所在・地番・地目・地積のすべてを下線で抹消し、
原因及びその日付欄には、何番に合筆した旨と、
登記の日付と同日閉鎖されたことが記録されるのです。
そして、閉鎖された地番は、以後、使用されることはありません。
合筆登記で土地の権利証が変わる。
所有権の登記がある土地の合筆登記の完了時には、
合筆して残る地番(上記例では1番)の土地について、
新たな登記識別情報が登記申請人に通知されます。
登記識別情報は、合筆後の権利証とも言える情報なので、
合筆する前の土地の権利証は、基本的に不要になります。
つまり、合筆する前の土地の権利証がいくつかあった場合、
合筆した後の登記識別情報が新たな権利証になるのです。
ただし、合筆する前の土地の権利証は、
他の土地の権利証も兼ねていることがあるため、
廃棄する際には十分な確認が必要です。
なお、登記識別情報通知がどういった書面なのかは、
「登記識別情報通知の見本」をご確認ください。
合筆登記で土地の地番が首位の地番になる。
合筆すると土地の地番は、原則、首位の地番になり、
残りの地番はすべて抹消されます。
首位の地番とは、一番若い地番のことです。
たとえば、合筆前の地番が1番、2番、3番なら、
合筆後の地番は、一番若い1番になります。
もし、合筆前の地番が12番、21番、56番なら、
合筆後の地番は、一番若い12番になるということです。
土地の地番に枝番が付いている場合も同じで、
合筆前の土地の地番が、5番1、5番6、7番、8番2なら、
合筆後の地番は、一番若い5番1になるということです。
なお、合筆後の土地の地番については、
一番若い地番以外の地番にもできる特別な事情も含めて、
「合筆後の地番はどうなる?特別な事情も解説!」で、
さらにくわしく解説しています。
合筆登記で土地の面積が合算される。
合筆すると、合筆する前の全ての土地の面積が合算されます。
たとえば、合筆前の土地の地番と面積が、
1番(100㎡)・2番(100㎡)・3番(100㎡)の場合、
合筆前の土地の面積を全て足して300㎡になるということです。
ただし、土地の面積の足し方には、
土地に地積測量図がある場合と無い場合とで違いがあり、
登記申請書に合筆後の面積を記入する際にも決まりがあります。
土地の面積の足し方や、
登記申請書に合筆後の面積を記入する際の注意点については、
「合筆後の土地の地積(面積)はどうなる?」を参照下さい。
合筆登記で土地の境界線が消える。
合筆する土地同士が接している境界線(筆界線とも言う)は、
すべて抹消されて、
合筆後の土地の周囲が筆界線となります。
たとえば、次のような1番と2番の土地を合筆した場合、
1番と2番の土地が接している境界線は抹消されます。
次のような四筆の土地を合筆した場合も、
合筆する土地同士が接している境界線は全て抹消されて、
合筆後の土地の周囲が境界線になるのです。
合筆登記ができないケースは?
合筆登記は、どんな土地同士でもできるわけではありません。
なぜなら、土地の合筆登記をするには6つの条件があり、
次の6つの条件の全てをクリアーしている土地同士でないと、
合筆できないからです。
- 土地が隣接していること。
- 土地の地目(ちもく)と地番区域が同じであること。
- 登記されている所有者の住所と氏名が全く同じであること。
- 共有の土地の場合は、共有者の持分が全く同じであること。
- 所有権の登記がされていない土地同士か、
所有権の登記がされている土地同士であること。 - 所有権の登記以外の権利に関する登記がされていないこと。
ただし、抵当権などの登記がされている場合、登記の目的、
登記原因、登記の日付、受付番号がすべて同じであるなど、
特例の場合は合筆可能。
つまり、上記1~6の条件を1つでも満たしていなければ、
合筆できないということです。
これら6つの合筆の条件(合筆できない土地)については、
「合筆の条件(合筆制限)は?合筆できない土地」で、
具体的にくわしく解説しています。
なお、合筆の制限の特例によって合筆できる場合については、
「合筆の制限の特例とは?」を参照ください。
抵当権付きの土地の合筆については、
「抵当権付きでも合筆可能?抵当権者の承諾は?」をご確認下さい。
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