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【この記事の監修者】土地家屋調査士:寺岡孝幸の顔写真

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:合筆登記など不動産の表示に関する登記全般。

経歴:開業以来21年間、合筆登記など登記に関する業務を行っています。
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土地の合筆のデメリットは、次の4つあります。

  1. 合筆後は元に戻すことが難しい。
  2. 合筆後は土地の一部の売却が難しくなる。
  3. 合筆後は土地の一部の担保提供が難しくなる。
  4. 合筆するには手間と費用がかかる。

ただし、この内、合筆のデメリットと確実に言えるのは、
4つ目の「合筆するには手間と費用がかかること」くらいです。

なぜなら、合筆後に、合筆前の状態に戻す必要がない場合や、
合筆前の個別の土地と同じ範囲を売却したり、
担保に入れることがなければ、それらのデメリットはないからです。

しかし、合筆のデメリットをよく知らずに合筆してしまうと、
元に戻すことが難しいため、あとで困ることもあります。

そこで、合筆の登記申請業務を行っている土地家屋調査士が、
合筆のデメリットについてわかりやすく解説致します。

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この記事を閲覧することで、合筆のデメリットが事前にわかり、
合筆によって、あなたがあとで困ることはなくなるでしょう。

合筆後は元に戻すことが難しい。

土地の合筆の登記を行うと、簡単に元に戻すことはできません。

なぜなら、「元に戻す」という内容の登記や、
「合筆前の状態に戻す」という手続き自体がないからです。

ただし、合筆する前の元の状態に戻す方法は1つあります。

それは、土地の分筆登記(ぶんぴつとうき)を行って、
合筆する前の元の状態に戻す方法です。

分筆登記を行えば、次のように、
一筆の土地を数筆の土地にわけることができるからです。

分筆後の土地の筆数や形状については、
その土地の所有者が自由に決めることができます。

しかし、分筆登記をするためには、
登記申請書だけでなく、地積測量図なども必要になります。

分筆登記に必要な地積測量図というのは、
次のような図面のことです。

分筆登記の地積測量図の例
(分筆登記の地積測量図の例)

このような地積測量図を作成するためには、
土地の周囲の境界線を隣地所有者と確認を行い、
各境界点などの測量作業も伴います。

特に、測量作業や地積測量図の作成については、
一般の人が行うには無理があり、分筆登記のすべてを、
登記の専門家の土地家屋調査士に依頼することが一般的です。

その際、費用が十数万円~数十万円かかることになります。

そのため、分筆登記によって、
合筆する前の元の状態に戻すことは可能ですが、
かなり難しい作業となり、費用もかかることになるのです。

ただ、合筆した後で、合筆前の状態に戻すことがなければ、
「合筆後は元に戻すことが難しい」というこのデメリットは、
特に問題ないことになります。

合筆後は土地の一部の売却が難しくなる。

合筆をせずに土地が数筆の個別のままであれば、
その内の一筆を売却することは、
土地の周囲の境界線が確定していれば簡単です。

しかし、数筆の土地を合筆して一筆の土地にした場合、
合筆後の土地の一部を売却するには、
分筆登記が必要になります。

なぜなら、合筆後の土地の一部を売却するには、
売却する範囲を決めて、新しい地番を作り、
売却しない範囲と地番を分ける必要があるからです。

ただし、このような場合、合筆したことが、
常にデメリットになるわけではありません。

合筆したことがデメリットになりうるのは、
合筆前の個別の土地の範囲と同じ範囲を売却する場合のみです。

合筆前の個別の土地と同じ範囲で売却するのであれば、
合筆しない方が良かったということになるからです。

逆に、合筆前の個別の土地の範囲と異なる範囲で、
売却が必要な場合には、
合筆したことがデメリットにはなりません。

具体的には、形の悪い数筆の土地を、
合筆により一筆の土地にしてから、
形の良い土地に分筆して高く売却したい場合があります。

このように、合筆後の土地の一部を売却する範囲が、
合筆前の個別の土地の範囲又は形状と異なる場合、
逆に合筆が先に必要で、合筆登記で土地を一筆にした後、
分筆登記を行う流れになるからです。

いずれにしても、合筆した後で、
土地の一部のみを売却することが無ければ、
「合筆後は土地の一部の売却が難しくなる。」
というこのデメリットは、特に問題ないことになります。

合筆後は土地の一部の担保提供が難しくなる。

土地を担保に金融機関でお金を借りる場合、
土地が一筆しかなければ、その土地全体を担保にするか、
担保に必要な分だけ分筆して土地を分けるしかありません。

しかし、もともと数筆の土地があれば、
借りる金額に応じて、
担保に入れる土地を調整することが可能です。

たとえば、500万円の融資を受けるケースで、
所有している土地が数筆あれば、
500万円分の価値の土地だけ担保に入れることができます。

逆に、土地を合筆して一筆にしていると、
その土地全体を担保提供するか、分筆登記で土地を分けて、
必要な分の土地だけ担保提供するかのどちらかになります。

つまり、合筆して一筆にまとめることで、
融資金額分に相当する土地のみの担保提供が、
難しくなることがあるわけです。

ただ、融資を受けて土地を担保に入れることが無ければ、
「合筆後は土地の一部の担保提供が難しくなる。」
というこのデメリットは、特に問題ないことになります。

合筆するには手間と費用がかかる。

合筆登記は、他の分筆登記や地積更正登記などと比べると、
一般の方でも簡単にできる登記です。

しかし、簡単にできる登記ですが、
登記申請書などを作成したり、法務局に提出したりと、
多少の手間はかかります。

合筆をしなければ、それらの手間はかからないので、
合筆のデメリットと言えるのです。

また、合筆登記をする場合、多少の費用がかかります。

合筆の費用については、自分で合筆登記をする場合と、
代理人の土地家屋調査士に依頼する場合とで、
金額が大きく違ってきます。

自分でする場合と土地家屋調査士に依頼する場合の費用
(自分でする場合と土地家屋調査士に依頼する場合の費用)

なぜなら、自分で合筆登記をする場合には、
多少の手間はかかりますが、
0円~数千円程度で済ませることが可能です。

逆に、代理人の土地家屋調査士に依頼する場合には、
ご自身はほぼ何も作業をしなくて良くなる反面、
5万円前後の費用がかかるからです。

そのため、合筆する前に、
自分でする場合と依頼する場合のどちらが良いか、
それぞれの費用対効果を比較してみる必要があります。

それぞれの合筆の費用については、
合筆の費用は?自分でする場合と依頼する場合」で、
くわしく解説しています。

なお、以前までは、合筆のデメリットとして、
合筆前の地積測量図が閉鎖されて困ることがありましたが、
現在では、合筆で地積測量図が閉鎖されることはありません。

合筆登記と地積測量図についてのご質問は、
合筆登記と地積測量図について徹底解説!」で、
1つ1つわかりやすくお答えしております。

また、あなたは合筆の7つのメリットについて確認されましたか?

まだ確認していないという方は、
合筆の7つのメリットとは?」をご確認ください。

もし、合筆登記を自分でやってみようという方は、
合筆登記は自分でできる?自分でする手順」を参照ください。

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