土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:合筆登記など不動産の表示に関する登記全般。
経歴:開業以来21年間、合筆登記など登記に関する業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら
合筆登記について、次のような疑問をお持ちの方は多いと思います。
- 「合筆登記とは何?合筆登記をすると土地の地番や登記はどうなる?」
- 「合筆登記をするメリットは何?逆にデメリットは?」
- 「合筆登記ができない場合とは?」
- 「合筆登記の申請人になれるのは誰?手続き先は?」
- 「合筆登記にかかる期間や必要な書類は?
- 「合筆登記は自分でできる?かかる費用はどれ位?」
このような合筆登記についての疑問に対して、
正確な答えを知っていないと、あとで困ることがあります。
そこで、合筆登記の申請業務を行っている土地家屋調査士が、
合筆登記についてわかりやすくお答え致します。
この記事を閲覧することで、合筆登記の概要がすべてわかります。
合筆登記とは?
合筆登記(ごうひつとうき 又は がっぴつとうき)とは、
数筆の土地を合併して、1筆の土地にする登記のことです。
具体的には、合筆前の土地の表題部所有者、
または、所有権の登記名義人が申請人となり、
合筆登記の申請書類を管轄法務局に提出して申請します。
そして、法務局の登記官が、合筆登記の申請書類を審査後、
合筆の登記内容を登記簿に記録することを、
合筆登記というのです。
合筆登記をすると土地の地番はどうなる?
合筆前の土地の地番の内、原則、
首位の地番(一番若い地番)が合筆後の地番となります。
そして、残りの地番はすべて閉鎖されます。
たとえば、合筆前の土地の地番が1番、2番、3番なら、
合筆後の地番は一番若い1番となり、
2番や3番の土地は閉鎖されるのです。
なお、合筆後の地番については、
[合筆後の地番はどうなる?特別な事情も解説!]で、
具体的にくわしく解説しています。
合筆登記をすると土地の登記簿はどうなる?
合筆登記をすると、合筆後に残る地番の登記簿には、
次の赤枠内のように記録されます。
つまり、地積欄に、合筆前の土地の地積の合計値が記録され、
原因及びその日付欄に、「③2番、3番を合筆」と記録され、
登記の日付として[令和〇年〇月〇日]が記録されるのです。
そして、合筆後に閉鎖される土地の登記簿は、
次の赤枠内のように記録されます。
閉鎖された地番は、以後、使用されることはありません。
合筆登記をするメリットとデメリットは?
合筆登記をするメリットは、次の7つあります。
以下、合筆登記をしない場合と比べてどうなるのかです。
- 登記情報や登記簿謄本の取得費を節約できる。
- 権利証や登記識別情報の管理がしやすくなる。
- 登記の住所・氏名の変更登記費用が安くなる。
- 相続・売却・担保設定の各登記費用が安くなる。
- 土地の境界の把握や管理が楽になる。
- 形が悪い土地を合筆して良い形に分筆できる。
- 固定資産税が安くなる場合もある。
これら合筆登記の7つのメリットについては、
「合筆の7つのメリットとは?」で、
1つ1つくわしく解説しています。
ただ、合筆登記には、次の4つのデメリットもあります。
- 合筆登記をした後は、元に戻すことが難しい。
- 合筆登記をした後は、土地の一部の売却が難しくなる。
- 合筆登記をした後は、土地の一部の担保提供が難しくなる。
- 合筆登記をするには手間と費用がかかる。
これら合筆登記のデメリットについては、
「合筆のデメリット」で、
1つ1つくわしく解説しています。
合筆登記ができない場合とは?
どんな土地でも合筆登記ができるわけではなく、
合筆登記ができない場合もあります。
合筆登記ができない場合とは、次のような土地です。
- 互いに接続していない土地
- 地目(ちもく)または地番区域が互いに異なる土地
- 表題部所有者又は所有権の登記名義人が互いに異なる土地
- 表題部所有者又は所有権の登記名義人の持分が互いに異なる土地
- 所有権の登記がある土地と、所有権の登記がない土地
- 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(特例を除く)
これらは合筆の条件や、合筆の制限と呼ばれていて、
上記6つの内、いずれか1つでも該当する場合には、
合筆登記ができない土地になります。
これら合筆の条件(合筆の制限)については、
「合筆の条件(合筆制限)は?合筆できない土地」で、
1つ1つくわしく解説しています。
合筆登記の申請人になるのは誰?
合筆登記の申請人になるのは、
土地の表題部所有者か、所有権の登記名義人のみです。
このことは、不動産登記法第39条で定められています。
不動産登記法 第三十九条
引用元:e-Gov法令検索.「不動産登記法 」. (参照 2021-08-13)
分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。
なお、表題部所有者とは何か、表題部所有者の確認方法などは、
「表題部所有者とは?」でくわしく解説しています。
所有権の登記名義人とは何かや、
所有権の登記名義人の確認方法については、
「所有権の登記名義人とは?」を参照ください。
土地が共有の場合の申請人は?
もし、土地が共有の場合には、
共有者全員が申請人となって、
合筆登記を申請しなければなりません。
合筆登記は、土地の地目変更登記などのように、
共有者の1人から申請できる登記ではないのです。
合筆の登記申請書にも、
共有者全員の住所・氏名を申請人として記載して、
各自実印の押印が必要になります。
そのため、共有者の内、
1人でも合筆登記に反対する人がいれば、
合筆登記ができないということになります。
合筆の登記申請書の様式と書き方については、
「合筆登記の申請書の様式(書式)と書き方」で、
くわしく解説しています。
代理人が申請する場合の申請人は?
土地家屋調査士などの代理人が合筆登記を申請する場合でも、
申請人には、その土地の表題部所有者か、
所有権の登記名義人がなります。
代理人が申請するからといって、
代理人が申請人になれるわけではありません。
代理人はあくまで申請人の代理だからです。
合筆の登記申請書にも、
申請人と代理人の両方の住所・氏名を記載することになります。
合筆の登記申請書の様式や書き方については、
「合筆の登記申請書の様式(書式)と書き方」で、
くわしく解説しています。
なお、代理人が合筆登記を申請する場合には、
申請人からの委任状が必要です。
合筆登記の委任状の書式や書き方については、
「合筆登記の委任状を徹底解説!」を参照ください。
合筆登記の手続き先は?
合筆登記の手続き先は、法務局または地方法務局、
若しくは、法務局や地方法務局の支局または出張所です。
ただし、法務局や地方法務局は全国各地にありますが、
どこでも良いわけではありません。
合筆しようとしている土地の管轄法務局のみです。
税務署や警察署などと同じように、
法務局にも管轄区域があるからです。
もし、間違って管轄外の法務局に申請書類を提出しても、
取下げするか、却下されることになります。
その際に、法務局の方で、
正しい管轄法務局へ転送するような取り扱いはありません。
どこの法務局が管轄法務局になるのかについては、
「登記申請先がわかる法務局の管轄区域の一覧」をご確認下さい。
ちなみに、法務局は、登記所という言い方もあります。
ただ、登記所という官公庁があるわけではなく、
法務局の中にある登記事務を行っている部署のことを、
登記所と呼んでいるのです。
法務局内には、登記事務を行っている部署だけでなく、
戸籍や供託などの事務を行っている部署もあるからです。
合筆登記の流れ
合筆登記は、通常、次の流れで進めることになります。
- 合筆したい全ての土地の最新の登記情報を確認する。
- 合筆の条件に照らし合わせて、合筆が可能か判断する。
- 合筆登記に必要な書類を準備・作成する。
- 管轄の法務局に合筆の登記申請書類を提出する。
- 法務局で書類審査が行われ、補正などあれば対処する。
- 登記完了後、合筆後の登記識別情報等を法務局から受け取る。
合筆登記にかかる期間は?
合筆登記にかかる期間はどのくらいなのか、
次の2つの期間でご説明いたします。
- 登記申請書類を法務局に提出するまでの期間
- 法務局に提出した後にかかる期間
まず、「登記申請書類を法務局に提出するまでの期間」は、
人によって多少異なり、1日で済ませる人もいれば、
数日~数週間かかる場合もあります。
合筆する土地の筆数が多い少ないや、
共有者がいるかいないか、登記申請の慣れ不慣れなどが、
作業日数に大きく影響するからです。
次に、「法務局に提出した後にかかる期間」ですが、
これは法務局での書類審査~登記完了までの期間のことで、
どこの法務局でも大体1週間程度です。
ただし、登記申請書類に不備・不足があった場合、
補正をする必要があるので、
申請人又は代理人が補正する作業期間は追加でかかります。
つまり、合筆登記をスムーズに進めた場合でも、
全体で10日程度の期間がかかることになるのです。
合筆登記に必要な書類は?
合筆登記に必要な書類としては、
次のように、常に必要な書類と、
ケースによって必要になる書類があります。
合筆登記の必要書類の一覧 | 必要なケース |
登記申請書 | ※常に必要な書類 |
登記識別情報又は登記済証 | ※所有権登記がある場合のみ必要 |
申請人全員の印鑑証明書 | ※所有権登記がある場合のみ必要 |
登録免許税納付用台紙 | ※所有権登記がある場合のみ必要 |
代表者資格証明情報 | ※申請人が法人の場合のみ必要 |
代理権限証明情報 | ※代理人が申請する場合のみ必要 |
地役権証明書 及び地役権図面 | ※合筆後の土地の一部に、 地役権がある場合のみ必要 |
合筆登記の必要書類については、
「合筆登記の必要書類を徹底解説!」で、
1つ1つくわしく解説しています。
なお、登記申請書の様式や書き方については、
「合筆登記の申請書の様式(書式)と書き方」を参照下さい。
登記識別情報や登記済権利証がどういった書類なのかは、
「登記識別情報通知の見本」や、
「登記済権利証の見本」をご確認ください。
登録免許税納付用台紙については、
「登録免許税納付用台紙テンプレートと書き方」で、
様式のダウンロードなど可能です。
代理権限証明情報というのは委任状のことで、
「合筆登記の委任状を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。
所有権の登記のあり無しの具体的な確認方法と、
合筆登記の登録免許税の税額と納め方については、
「合筆登記の登録免許税について」を参照ください。
合筆登記は自分でできる?
合筆登記は、土地の測量など専門的な技術は必要ないので、
一般の方でも、自分でできる登記です。
合筆登記を自分でする手順
合筆登記を自分でする場合、
次の1~6の手順で進めると良いです。
- 合筆前の土地の登記情報、公図、地積測量図を用意する。
- 登記情報と公図、現地の状況から、合筆可能か判断する。
- 合筆の登記申請書を作成して、添付情報を用意する。
- 合筆したい土地の管轄法務局(登記所)に直接出向く方法か、
郵送による方法で、申請書類を提出する。 - 登記所で、申請書類の審査や、現地の確認が行われる。
- 合筆登記の完了後、登記所の窓口または郵送で、
登記完了証や、合筆後の登記識別情報通知(権利証)などを受け取る。
なお、上記の合筆登記を自分でする手順については、
「合筆登記は自分でできる?自分でする手順」で、
1つ1つくわしく解説しています。
合筆登記にかかる費用は?
合筆登記にかかる費用は、自分でする場合と、
代理人の土地家屋調査士に依頼した場合とで、
大きく違いがあります。
合筆登記を自分でする場合の費用の目安
まず、自分でする場合の費用の目安は、
土地の筆数や、所有権登記の有無にもよりますが、
だいたい0円~数千円程度です。
ただし、所有権登記のある土地の合筆の場合には、
登録免許税1000円が必要なので、
その分の費用は必ずかかることになります。
逆に、所有権登記のない土地の合筆なら、
登録免許税は不要です。
なお、所有権登記の有無の確認方法と、
合筆登記の登録免許税の税額と納め方については、
「合筆登記の登録免許税について」を参照ください。
代理人(土地家屋調査士)に依頼した場合の費用の相場
代理人(土地家屋調査士)に合筆をすべて依頼した場合、
土地家屋調査士によって報酬額に多少の差があります。
ただ、日本土地家屋調査士会連合会が、
令和元年度に行った合筆の報酬額の調査結果では、
全国の平均報酬額が49,481円(税抜)でした。
そのため、土地家屋調査士に依頼した場合の費用の相場は、
おおよそ5万円前後と言えます。
なお、合筆登記の費用については、
「合筆の費用は?自分でする場合と依頼する場合」で、
くわしく解説しています。
このページを読んだ人は、次の関連性の高いページも読んでいます。
・ 合筆のデメリット