土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:合筆登記など不動産の表示に関する登記全般。
経歴:開業以来21年間、合筆登記など登記に関する業務を行っています。
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合筆登記の申請人になれるのは誰なのかは、
不動産登記法第39条1項で、次のように定められています。
第三十九条 分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。
引用元: e-Gov法令検索.「不動産登記法 」. (参照 2022-9-30)
つまり、土地の表題部所有者(ひょうだいぶしょゆうしゃ)か、
所有権の登記名義人(とうきめいぎにん)のみが、
合筆登記の申請人になれるということです。
もし、合筆登記の申請人になれない人が申請をしても、
法務局での審査が通らず、あとで困ることになります。
そこで、合筆登記の申請人について、
合筆登記の申請業務を行っている土地家屋調査士が、
具体的にわかりやすく解説いたします。
この記事を閲覧することで、合筆登記の申請人について、
誰がなれるのか、その調べ方、申請書への書き方がすべてわかります。
合筆登記の申請人になれるのは?
土地の表題部所有者(ひょうだいぶしょゆうしゃ)、
または、所有権の登記名義人のみが、
合筆登記の申請人となりえます。
それ以外の方は、合筆登記の申請人になることはできません。
たとえば、土地を購入して実際の所有者であっても、
土地の表題部所有者か、所有権の登記名義人でなければ、
合筆登記の申請人にはなれないということです。
土地を購入したのに、所有権保存登記 又は 所有権移転登記など、
権利に関する登記をしていない所有者がこれにあたります。
また、土地の固定資産税の納税義務者になっていても、
それだけでは、その土地の合筆登記の申請人にはなれません。
ただ、土地の表題部所有者や所有権の登記名義人というのは、
人だけでなく、会社などの法人の場合や、
すでに亡くなっている故人の場合もあることに注意が必要です。
土地の表題部所有者や所有権の登記名義人の調べ方
土地の表題部所有者や所有権の登記名義人を調べるには、
いくつかの方法があります。
しかし、土地の現在の登記情報、または、
登記簿謄本(登記事項証明)を取得して調べる方法が、
一番確かな方法と言えます。
なぜなら、手元の登記関係資料や、
登記識別情報通知などで調べる方法もありますが、
その当時の資料から内容が変わっている可能性もあります。
土地の現在の登記情報や登記簿謄本(登記事項証明)なら、
現在の表題部所有者 又は 所有権の登記名義人のどちらかが、
かならず記載されているため、一番確かだからです。
下図は、土地の登記情報に表題部所有者の記載がある具体例です。
土地の登記情報 又は 登記簿謄本(登記事項証明書)の表題部に、
所有者の住所と氏名の記載があり、住所氏名に下線もなければ、
ここに記載されている表題部所有者が、この土地の合筆登記の申請人になります。
もし、所有者の住所と氏名に下線が引いてあれば、
それは抹消されたという意味なので注意が必要です。
ただ、所有権の登記がされている土地については、
通常、上図のような表題部所有者の記載はありませんが、
記載があっても、下線が引かれて抹消されています。
その代わり、土地の登記情報 又は 登記簿謄本の権利部に、
下図のような所有権の登記名義人が記載されています。
そして、この権利部に記載されている所有権の登記名義人が、
この土地の合筆登記の申請人となるのです。
ただし、土地の登記情報 又は 登記簿謄本の権利部には、
過去の所有権の登記名義人の記載もある場合があり、
順位番号や持分などで、現在の所有権の登記名義人を判断する必要があります。
ちなみに、所有者の住所と氏名に下線が引いてあれば、
その分は抹消されたという意味です。
また、土地の表題部所有者、または、
所有権の登記名義人を調べる際には、
住民登録している住所なのかも確認しておくと良いです。
なぜなら、現在の所有権の登記名義人の住所が、
住民登録されている現在の住所でない場合、
合筆登記の前に住所変更登記が必要になるからです。
なお、合筆登記の前の住所変更登記については、
「合筆登記の前提として住所変更登記は必要?」で、
くわしく解説しています。
表題部所有者と所有権の登記名義人がよくわからない方は、
「表題部所有者とは?」と「所有権の登記名義人とは?」を、
それぞれ参照ください。
土地が共有の場合、合筆登記の申請人は?
土地が共有の場合には、共有者全員が合筆登記の申請人になります。
数人の共有者の内、誰か1人が代表して、
合筆登記の申請人になるといったことはできません。
合筆登記は、必ず共有者全員で申請しなければならないのです。
そのため、もし、合筆登記の申請を代理人が行う場合には、
共有者全員から委任を受ける必要があります。
合筆登記の委任状については、
「合筆登記の委任状を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。
合筆登記申請書での申請人の書き方
合筆登記申請書での申請人の書き方は、
単有の場合、共有の場合、法人の場合、故人の場合で、
それぞれ次のように違いがあります。
(単有の場合)
単有とは、所有者が単独1名の土地のことで、
合筆登記申請書の申請人の所に、
次のように住所と氏名を記載して、実印を押印します。
単有の場合、申請人の書き方の注意点としては、
登記申請時に住民登録されている住所と氏名を記載することです。
過去の住所や氏名を記載してはいけません。
もし、登記情報や登記簿謄本を取得した際に、
所有者の住所または氏名が過去のものであれば、
合筆登記の前に、住所変更登記や氏名変更登記が必要になります。
合筆登記の前提としての住所変更登記については、
「合筆登記の前提として住所変更登記は必要?」で、
くわしく解説しています。
合筆の登記申請書の様式や書き方については、
「合筆の登記申請書の様式(書式)と書き方」を参照下さい。
(共有の場合)
共有とは、所有者が数人の土地のことで、
合筆登記申請書の申請人の所に、
次のように共有者全員の住所と氏名を記載して、実印を押印します。
共有の場合、申請人の書き方の注意点としては、
登記申請時に住民登録されている住所と氏名を、
共有者全員分記載することです。
そして、持ち分の記載は不要なことです。
なお、合筆の登記申請書の様式や書き方については、
「合筆の登記申請書の様式(書式)と書き方」で、
くわしく解説しています。
(法人の場合)
会社などの法人の場合、合筆登記申請書の申請人の所に、
法人の登記されている住所、法人名、代表者の氏名を記載します。
ただし、法人に本店(や支店がある場合、
常に、本店の住所、代表者名などを記載するわけではありません。
土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人として、
登記されている住所、法人名、代表者名を、
それぞれ記載することに注意が必要です。
もし、土地の表題部所有者 又は 所有権の登記名義人の記載が、
過去の住所や法人名、代表者名になっていれば、
合筆登記の前に、住所などの変更登記が必要になります。
(故人の場合)
故人(亡くなった人)の名義の土地を合筆したい場合、
まず、相続による所有権移転登記(相続登記)を行い、
相続人の名義にしてから合筆登記をするのが一般的です。
しかし、相続登記をすることなく、
相続人から合筆登記の申請をすることもできます。
その場合、合筆登記申請書の申請人の所に、
被相続人(亡くなった方)とその相続人全員を記載します。
なお、合筆の登記申請書の様式や書き方については、
「合筆の登記申請書の様式(書式)と書き方」で、
くわしく解説しています。
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