土地の合筆のメリットには、次の7つのメリットがあります。
- 登記情報や登記簿謄本の取得費を節約できる。
- 権利証や登記識別情報の管理がしやすくなる。
- 登記の住所・氏名の変更登記費用が安くなる。
- 相続・売却・担保設定の各登記費用が安くなる。
- 土地の境界の把握や管理が楽になる。
- 形が悪い土地を合筆して良い形に分筆できる。
- 固定資産税が安くなる場合もある。
上記7つのそれぞれのメリットが自然に積み重なることで、
どんどんメリットが大きくなっていくのが合筆の特徴です。
そこで、合筆の7つのメリットについて、
合筆の登記申請業務を行っている土地家屋調査士が、
1つ1つ具体的にわかりやすく解説いたします。
土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:合筆登記など不動産の表示に関する登記全般。
経歴:開業以来21年間、合筆登記など登記に関する業務を行っています。
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この記事を閲覧することで、合筆のメリットについて、
どういった場合に、どんなメリットがあるのかがわかります。
なお、この記事の内容は、下記の動画でも無料で何度でもご視聴いただけます。
登記情報や登記簿謄本の取得費を節約できる。
土地について何かしようとした場合、
土地の登記内容確認のため、
登記情報や登記簿謄本が必要になることがほとんどです。
具体的に、登記情報や登記簿謄本が必要になる例としては、
次のようにたくさんのケースがあります。
- 土地の所有者の住所又は氏名が変わった時
- 土地を売却する時
- 土地に担保を設定する時
- 土地の境界確定をする時
- 土地の地目(種類)が変わった時
- 土地の分筆又は合筆をする時
- 土地の面積の更正をする時
さらに、上記以外のケースでも、
登記情報や登記簿謄本が必要なことはあります。
もし、土地が数筆あれば、毎回、
数筆分の登記情報または登記簿謄本の取得が、
必要になってしまうのです。
しかし、土地の合筆をして1筆にまとめていれば、
毎回、1筆分のみの取得費用で済みます。
取得費用としては、土地の登記情報を取得する場合、
土地1筆につき332円が必要で、
登記簿謄本を取得するなら土地1筆につき600円が必要です。
たとえば、土地が2筆ある場合、
それぞれの土地の登記簿謄本を取得するのに、
2筆×600円で1200円の取得費用が毎回かかります。
しかし、2筆の土地を1筆に合筆していれば、
登記簿謄本を取得するのに、
毎回、半分の600円の取得費用で済むわけです。
もし、10筆の土地を1筆に合筆した場合は、
登記情報(又は登記簿謄本)の取得費用が、
合筆前に比べて、毎回、10分の1の費用になります。
つまり、土地を合筆することによって、
登記情報(又は登記簿謄本)の取得費用が、毎回、
合筆前に比べて半分以下の費用で済むメリットがあるのです。
このことは、合筆前の土地の数が多ければ多いほど、
登記情報(又は登記簿謄本)が必要になる回数が多いほど、
取得費用を節約できるメリットが、
どんどん大きくなっていくということなのです。
権利証や登記識別情報の管理がしやすくなる。
所有している土地が何筆かある場合、
各土地ごとに権利証や登記識別情報が存在することになり、
土地の数が多いと、管理が大変になります。
しかし、合筆して1筆にまとめていれば、
権利証も登記識別情報も1つになるので、管理がしやすくなるのです。
また、共有の土地(所有者が複数人の土地)の場合には、
権利証や登記識別情報が、共有者の数×土地の数だけ存在します。
たとえば、所有者が2名の土地が3筆ある場合、
権利証や登記識別情報の数は、
2名×3筆で6通もあることになります。
しかし、それらの土地を合筆できれば、
所有者の数(2名)と同じ数(2通)と少なくなり、
権利証も登記識別情報も管理がしやすくなるのです。
なお、権利証や登記識別情報が具体的にどういった書類かは、
「登記済権利証の見本」や「登記識別情報通知の見本」で、
くわしく解説しています。
登記の住所・氏名の変更登記費用が安くなる。
土地の所有者の住所または氏名に変更があった場合、
登記上の住所・氏名の変更登記をしなければなりません。
その際、土地の筆数×登録免許税1,000円がかかります。
たとえば、住所変更登記の必要な土地が4筆あれば、
4筆×登録免許税1,000円=4,000円かかるわけです。
しかし、その4筆の土地を合筆して1筆にまとめていれば、
登録免許税1,000円のみで済ませることができるのです。
登録免許税は全国共通の税となりますので、
ご自分で住所変更登記をした場合も、
司法書士に依頼した場合も、同じく必要な税です。
また、住所変更登記を司法書士に依頼した場合には、
料金約1万円+筆数加算料金+実費(筆数分の登録免許税等)
の費用がかかります。
たとえば、住所変更登記の必要な土地が3筆あれば、
料金約1万円+3筆加算料金+登録免許税3,000円が、
費用としてかかることになります。
しかし、合筆して1筆になっていれば、
料金約1万円+登録免許税1,000円のみとなり、
合筆してない場合に比べて、安く済ませることができるのです。
ちなみに、土地を合筆するためには、
各土地の所有者の住所・氏名が同じでなければならない、
という条件があります。
土地の所有者の住所または氏名が、
少しでも違っている土地同士を、
合筆することはできないということです。
合筆の条件については他にもいくつかあるため、
「合筆の条件(合筆制限)は?合筆できない土地」で、
くわしく解説しています。
相続・売却・担保設定の各登記費用が安くなる。
相続・売却・担保設定の各登記手続きは、
一般的に、司法書士に依頼することが多いです。
そして、司法書士に依頼する際に、
登記の必要な土地が1筆ではなく、
何筆かあれば、筆数加算料金を負担することになります。
筆数加算料金というのは、土地の数が多ければ多いほど、
登記情報の調査や、書類の作成に手間がかかるため、
筆数に応じて加算される料金のことです。
もし、土地を合筆して1筆にまとめていれば、
毎回、筆数加算料金は必要なくなるので、
所有者又は相続人の金銭負担を大幅に減らすことができるのです。
土地の境界の把握や管理が楽になる。
土地の所有者は、土地の境界について知っておく必要があり、
土地の各境界点に境界標があれば、
それらすべてを管理することになります。
たとえば、下図の1番、2番、3番、4番のように、
土地の筆数が多ければ多いほど、
各境界点の把握と管理は大変です。
もし、1~4番の4筆の土地を合筆して1筆にまとめれば、
周囲の境界点の把握と管理のみで良くなります。
つまり、合筆前の土地の境界点が9点だったのが、
下図のように、合筆後は周囲の4点になるので、
合筆してない場合に比べて、境界点の把握と管理が楽になるのです。
形が悪い土地を合筆して良い形に分筆できる。
たとえば、下図2のように、所有している各土地が
あまり形の良くない土地(1番~5番の土地)ばかりでは、
売却時に売れにくいという問題があります。
(図2)
そこで、下図3のように、土地を先に合筆してから、
形の良い土地に分筆(1番1・1番2・1番3)して売り出すと、
売りやすくなる場合があるということです。
(図3)
ただし、土地を合筆する場合も、分筆する場合も、
それぞれ費用がかかるので、それらの費用も総合して、
どちらが得なのか判断する必要があります。
特に、分筆登記は測量や地積測量図の作成作業が伴うため、
個人で行うのは無理があり、
登記の専門家の土地家屋調査士に依頼することがほとんどです。
そして、土地の分筆登記を土地家屋調査士に依頼する場合、
少なくとも10万~20万円の費用がかかり、
場合によっては、それ以上の費用がかかるので注意が必要です。
ちなみに、合筆して分筆する一連の流れを、
合筆登記と分筆登記を別々に申請することもできますが、
分合筆という1つの登記で申請することもできます。
固定資産税が安くなる場合もある。
誤解があると困りますので最初にお伝えしておきますが、
合筆したからと言って、
固定資産税が安くなるというわけではありません。
なぜなら、固定資産税については、
市の職員が土地の利用目的などを見て判断し、
課税されるものだからです。
そのため、土地を合筆してもしなくても、
土地の利用目的について市の職員の判断に間違いがなければ、
固定資産税が変わることはありません。
しかし、たとえば下図4のように、
2筆の土地(1番:宅地、2番:駐車場)があった場合、
本来は自宅用の駐車場として利用しているのに、
貸し駐車場と市に判断されていれば、駐車場の固定資産税は高くなります。
(図4)
その場合、2番の土地は自宅用の駐車場であることを、
市の担当職員に伝えることで、
住宅用地の特例(200㎡以下は評価額の6分の1)により、
固定資産税を安くすることができます。
しかし、2番の土地の駐車場について、
市の職員と判断が異なる場合もありえます。
その場合、1番の宅地と2番の駐車場を合筆できれば、
利用目的をはっきり示すことができるので、
固定資産税も安くできる可能性があるわけです。
なぜなら、土地と土地を合筆するには、
地目(ちもく:土地の種類)が同じでないと合筆できないため、
2筆を合筆できるということは、
駐車場は自宅用の駐車場と想像できるからです。
固定資産税は、土地の現況の地目で判断されますが、
登記地目も多少なりとも影響があるため、
固定資産税を見直す可能性もあるということです。
なお、地目とは何かや、登記地目とは何か、
地目はどうやって調べるのかについては、
「地目(ちもく)とは?」でくわしく解説しています。
地目の種類とそれぞれの具体例については、
「地目の種類:全23種類の地目一覧と具体例」を参照下さい。
また、土地と土地を合筆するためには、
地目が同じであること以外にも、
いくつかの条件があり、合筆できない土地もあります。
そのため、合筆できるかできないかについては、
「合筆の条件(合筆制限)は?合筆できない土地」で、
最初に1つ1つ合筆の条件を確認しておく必要があります。
ただ、合筆のメリットを知ると同時に、
合筆のデメリットも知っておく必要があります。
そこで、合筆のデメリットについては、
「合筆のデメリット」でくわしく解説しています。
もし、合筆を自分でしてみたいという方は、
「合筆登記は自分でできる?自分でする手順」を参照下さい。
また、合筆するために必要な書類については、
「合筆登記の必要書類を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。